抜き身じゃいられなくて、モノの力を借りてようやく自信ぽいものをまとっている

今朝は大パニックだった。ベルトをなくしてしまったらしい。でも、財布も鍵もなくさない僕がベルトみたいなデカいものを失くす気がしない。そもそも部屋でしか外さないし、最後に置いた場所も覚えている。

これって、誰かが間違えて持っていったとかそんな感じか?と思ったら余計に訳わからなくなって、架空の盗賊を何度も何度も責めた。「お前が大切なベルトを持っていったせいでこっちはパニックなんだぞ!」と。



ベルトは最近買ったものだった。適当なベルトを使っていたのだが、ボロボロになってさすがにみすぼらしいかなと思い、新調した。はじめて自分の腰回りに合わせてカットしてもらい、穴もあけてもらった。一般的なベルトだとぶかぶかだったから、本当に買ってよかった。

僕は服やベルトを買うけど、別に商品そのものをゲトることに快感を覚えているわけではなくて、自分が厳選した商品を身につけることで得られる自信をゲトっている。そのために金を払っている。


今日は自信を持って振る舞わなくてはいけない予定が2つもあったので、それだけの自信を服装で強化する必要があった。抜き身じゃいられなくて、モノの力を借りてようやく自信ぽいものをまとっているのに、ベルトがどっかいってしまった。


どうすればいいんだろう。「今日はこういう格好をしよう」と一度決めたら全然変えられなくて、ベルトがないことにすごく驚いて焦って緊張した。うまく臨機応変に「まあないなら仕方ないか。こっちにしよ〜」と出来ればいいのだが、全然そんな風に振る舞えない。誰かといたらまだマシだったかもしれないが、朝起きてひとりベルトがない事実に向き合うことができる状態では到底なかった。


仕方ないのでみすぼらしいと思った古いベルトをつける。うわあ。だってみすぼらしいと思って買い替えたのに。えー。どうすればいいんだ。「すみません、みすぼらしいベルトをしめた人間ですが何卒よろしくお願いします」みたいな顔をしてしまう。どうしよう。自信をもって人前で諸々やれる感じではない。

えー。


本当に誰がどこにやっちゃったんだろう。この困惑と、焦りと、緊張に対する憎悪と怒りはどこにぶつければいいんだろう。自分がなくしたのであれば「ばーーーか!」で済むけど、もし他人が関わっていたらその時はキレちゃうかもしれない。あの息苦しい時間に対してどう落とし前つけてくれるんかなあ!?ていう態度を取ってしまう。


全然助からないよー。


たかがベルトでパニクってんじゃねえよ。とか言われたらどうしよう。こっちからしたら「てめえにコトの重大さを勝手に推し量られる筋合いはねんだよ。こっちからしたらベルトがない=一日中しょんぼりしてるのに、自信満々に振る舞わなきゃいけない大変さがあんだよ!!てか結構高かったんだぞ!」という感じだが、でも実際「たかがベルト」理論もわかる。

いやでも!自分のつらさを勝手にサゲられたくない。つらいもんはつらい。このつらさを分かるのは最終的には自分だけだから、せめて「つらいよね」って言ってあげたい。


どこ行っちゃったんだろう……



追記

なんと今、弟の中学校にあるらしい。弟が友だちのベルトを持って帰ってきてしまったと勘違いして学校に持っていき、先生に渡してしまったそうだ。

そんなことある?
じゃあお前は自分の鞄からベルトを取り出した覚えがあるのかと問うと、いや出してないけど。という。鞄から出してないベルトをなぜ学校から持ってきたと勘違いするのか甚だ疑問だが、しかし「そんなてきとうな場所に置いておくお前が悪いよ」と言われてしまって、もう黙るしかなかった。「そんなに大事ならもっと大事な場所に置いてよ!」と言われ、ごもっともだなと。でも全部大事なものだから置いておける場所なんてないし、モノの管理もできないし、ダメダメだし。とてもつらいし。もう早く消えちゃいたい。

ベルトが帰ってくるまで自信もなんとなくない。自信までも中学校の職員室に安置されているらしい。助けてくれ。